2008年6月21日土曜日

なぜSOAは普及しないのか

今日、ある調査会社の方と話す機会があって、表題の件について「完全に私見ですが」と前置きしつつ会話した。

ボクが思うに、結論として「SOAは、ついぞ普及しない」。
原因は、以下の2つ。
1.業務をSOAで必要となるサービスレベルまで落としこめるアーキテクトがいない
2.SOAが浸透している米国とは文化的土壌があまりに違う

1について。
SOAの目指すところ、それは企業内の全体最適あるいは部分最適であったり、業務効率化であったりするわけですが、これらを実現しようと思うと当然、現場レベルでのボトムアップ的な目線と、経営側から見たトップダウン的な目線が必要(特に日本の場合はシステムを利用するユーザ優先なので、ボトムアップ的な目線が重要)なわけです。そこへさらに、その時点で最善と思われるSOA関連技術を熟知しつつ、システム構築の際に勘所となる「肝」を押さえたIT技術者(広義)が必要なわけです。
そんな人、日本に何人といるのでしょうか?

例えば米国の場合、SI企業というのがほとんどありません。米国は、企業が自社内部に情報システム部門を整えているのが普通であり、そこが社内のシステムを構築していくからです。この場合、企業のシステム部門なので、自社内の業務や、それこそ企業文化、システム構成については熟知しているわけです。それも、システム部門で働くIT技術者が。というわけで、上記条件、クリアしています。

これが、そのまま、原因の「2」に繋がります。
さらに米国は「パッケージに業務を合わせる」ということに抵抗感がない風土だそうで、なおさら新しいシステム導入のハードルが低い。日本のように「既存のシステムと見た目や操作感を変更せずに実現するんだ!」といった不毛な努力(とは言い過ぎかもしれませんが、大抵不毛なことが多い)は不要です。

このところ、この分野でのキーワードはすっかり「SaaS」がもっていっていますね。
日経ソリューションビジネスに載っていたデータを見ると、
「ユーザー企業のSaaSの認知度は43%、利用意向は73%と非常に前向き」
(出所:マーケティングビジョン研究所/2007.5.10)
とのことで、確実にユーザ企業まで浸透していきそうな気配はありますが、それはSOAが騒がれ始めた頃も同じ状況でした。
そこで、約1年後である2008.3.31発表のデータ(出所:「コンピュータソフトウェア協会(CSAJ)SaaS研究会」)を見ると、
「中小企業のSaaS利用意向は約2割」と、やはり浸透には時間がかかりそうな気配があります。
(対象を中小企業に絞っているから、というのもあるかもしれませんが)

ただ、このアンケートの回答者が考えるSaaSのメリットが興味深くて、
■メリット
1.初期コストが安い
2.運用コストが削減できる
3.導入までの期間が短い
4.ネット接続PCとブラウザがあれば利用できる
5.使えないと思えば解約できる
6.自社システム構成を考えなくてよい
 :
といった内容。これらはひっくり返すとSOAのデメリットに、そのままなると思いませんか?

1.初期コストが高い
2.運用コストも高い
3.導入までの期間がすごく長い
4.(場合によっては)いろんなソフトが必要
5.一度構築したら(償却するまでは)使わないと。
6.自社システム構成を熟知した上で変更にTRYしないといけない…


システム構築は「軽く・早く」、という時勢とは、どう考えても逆行してしまっているのは否めない感があります。

あと、「効率化・生産性の向上なんて言いますけど、そんなの目に見えない。効果が見えにくいしコストも見えにくい、そんなものにユーザ企業がお金を出しますかね?」という毒を最後にはいてみたところ、結構刺さったみたいです。

これからSOAに関するアンケートを実施するそうですが、是非とも結果を伺ってみたいです。
ちなみに、「SOA実施率は8.4%で大企業が中心」(出所:IDC Japan/2007.11.12)です。
日本は「事例がすべて」のIT社会なので、これが大企業を中心に30%ぐらいになってくると、また状況は変わるんでしょうね。

それから、せっかく「SaaS」という言葉が浸透し始めているのに、「PaaS」とか「XaaS」とか新しい言葉を出して遊んでるIT業界のマーケッターは、ほんと、そういうのやめてください。混乱して発展が止まるだけです。きちんと技術的土台(開発の現実)を理解した上で、言葉を作ってくださいね。


それ以外にもいろんなことを話しましたが、長くなりすぎたのでそれはまた別の機会に。

0 件のコメント: