2011年5月26日木曜日

【読書】フェイスブック 若き天才の野望

フェイスブック 若き天才の野望 (5億人をつなぐソーシャルネットワークはこう生まれた)いつも通りの「今さら読書感想文」です。
このところあまり本を読む時間を作れていなかったので、今年のゴールデンウィークは読書週間にしようと思い立ちつつ、案の定そんなに時間も取れずに(読むのも遅いし)ほぼこれ一冊で終わりました(泣)。

ただ、これ1冊で十分でもありました。

そもそもFacebookって、もともとはそのままの名前で存在する大学名簿(冊子)だったんですね。まったく知りませんでした。それをオンライン化する、というただそれだけの、ひょっとすると誰でも簡単に思いつきそうなことなんだけど、それで一気にSNSの覇者になってしまったマーク・ザッカーバーグの、それでもやはり常人とは圧倒的に違う天才的な先を見る力、感じ取る力、度が過ぎるほどに自分の信念に正直なところが丁寧に描かれていて、読みだすと止まりません。

先に映画ソーシャル・ネットワークを観ていたので、特に冒頭部分、Facebookが会社のような体を成し始めるまでの部分は非常にリアルな映像を思い描くことができ、映画をなぞるような感じで読み進めることができて楽しめます。
ちなみに映画で描かれている部分はこの本の中の本当に最初の数章だけ。面白くなってくるのはその後。
爆発的にユーザー数を増やしながら、それに見合った収益をまったく上げない(そのことに興味すらない!)のに、名だたる投資家・投資会社たちの投資合戦を呼び起こし、パーカーらの強力な支援を受けながら彼らと渡りあい、MySpaceなどの競合を打ち負かしながら、何十万ものユーザーを抱えても常にfacebookによる成功に対して懐疑的であり(事実、周囲がFacebook一本で成功を確信して盛り上がっているときに、マーク本人はそれとは別のP2Pサービスの開発に時間を割いていた)、会社組織として大きくなってきたときに大きくなったが故の危機的状況を内部に抱え、リーダーとしての心構えを勉強し、そしてジョブスと比肩されるほどの若きカリスマ経営者となっていく。20歳そこらで。
その様が、飾られることもなく、丁寧な取材に基づいて構成されていて、単純に読み物として面白いのはもちろんのこと、Webサービス界隈にいる人ならいろいろ勉強になることも多く、是非読んでおくといいと思う。ボクも遅まきながら読んで良かったと思っている。

本格的な書評はWEB上の至る所に素晴らしい内容が掲載されていると思うので、ボクはとりあえず上記のような感想を残しつつ、印象に残った部分をいくつか引用。

■第6章 本物の企業へ(P.202)
ザッカーバーグにとって一番やりたくないのはわが子ともいうべきザ・フェイスブックを売ることだった。ザッカーバーグがスタンフォード大で講演した時、聴衆からいわゆる「出口戦略」について質問が出た。つまり創業した企業をいかに「マネタイズ<現金化>」するかについての戦略である。ザッカーバーグは気分を害したようにぶっきらぼうな口調になった。
「ぼくはこのサービスをどうつくっていくかを考えている。出ていくことなんか考えてない。ぼくは自分たちのやっていることが一番面白いと思う。他人が何をしようと興味はないね。ぼくらはクールなことをやっているんだから、それでいいじゃないか。悪いが、出口戦略なんか考えたことがない」とザッカーバーグは素っ気なく答えた。


■第10章 プライバシー(P.290)
「仕事上の友だちや同僚と、それ以外の知り合いとで異なるイメージを見せる時代は、もうすぐ終わる」
と彼は言う。彼にはいくつか主張があった。
「2種類のアイデンティティーを持つことは、不誠実さの見本だ」
ザッカーバーグが道徳家のように言う。しかし、実利的な面を挙げてこうも行った。
「現代社会の透明性は、ひとりがふたつのアイデンティティーを持つことを許さない」

個人的には、この直前の第9章(2006年)、「情報公開」にまつわる事件とそれに対するマークの対応、そしてこの第10章までの件(くだり)、特に今後のWEBサービスとユーザー動向を考える上で非常に示唆に富んだ内容で参考になった。

■第14章 フェイスブックと世界(P.406)
彼は後の世界での大規模な成長に備えた基盤をつくるために、数々の正しい行動をした。たとえばザッカーバーグは、フェイスブックのインタフェースを常にシンプルで無駄なく整然とさせてきた。グーグルと同じく、舞台裏にあるケタ外れに複雑な一連のテクノロジーを簡素な外観で覆い隠すことで、多種多様な人々を温かく迎え入れた。スペインのある滞在地で、ザッカーバーグは自らの国際戦略の概要を話した。
「人々ができるだけ簡単に情報を共有できる、最もシンプルで最高の製品をつくることだけです」

シンプルなインタフェース、とても大事です。
でも、シンプルなほど難しい。

■第15章 世界の仕組みを変える(P.429)
ニュースフィードのニュースは、かつていかなる専門メディア組織が配信しようとしたニュースよりも、はるかに個人的だった。それは友だちが何をしているか、何に関心があるかに関する当たり前な日常の情報だった。ザッカーバーグが社内でニュースフィードの論拠として挙げた話を思い出してほしい。「自分の家の前で死んでいくリスのほうが、アフリカで死んでいく人たちのことよりも、たった今は重要かもしれない」。今やフェイスブック上での行動の一つひとつが、友だちにとってのニュースになる。

■第17章 未来へ(P.465)
何人かの同僚によると、オープン性と公平性を収益より優先させるというザッカーバーグの欲求は、彼が満足を先送りすることに長けている証しだという。あるいは、彼を駆り立てているのは満足などといった感情とは無縁なのかもしれない。「彼はいつでも次を目指して努力している」と側近のある幹部が言う。
「人にはたいてい安定期や節目があって、のんびり祝福したり達成感を味わったりすることがある。マークにはそれがない」

なんだか、「数ある著作の中で最高傑作は?」と聞かれて必ず「次回作だ」と答えるドラッカーのよう。
その他、この章にはチェック箇所がたくさん。

意識的に後半をピックアップしましたが、もちろん前半部分でも「ふぬぅ・・・」と唸ること多々。
読み物としても、十分お勧めです。
フェイスブック 若き天才の野望 (5億人をつなぐソーシャルネットワークはこう生まれた)

先に映画を観てから読むと、よりイメージしやすく楽しめること必至。
(映画は完全フィクションだけどね)
ソーシャル・ネットワーク 【デラックス・コレクターズ・エディション】(2枚組) [DVD]



以下、完全なる余談。
はて、そもそも自分がアカウント登録したのはいつだろう、と過去のメールを掘り起こしてみると、どうやらボクは今からちょうど約3年前、2008年6月4日に登録したらしい。第14章で紹介されている通り、「クラウド翻訳」作戦で一気に各国語に翻訳して展開し始めた頃です。
ちょうど、オバマが大統領選でSNSを活用しまくって一大旋風を巻き起こしている頃で、ボクもとりあえず試しにアカウント登録して日本語メールに安心しながら触ってみたものの、とはいえ当時はまだふんだんに英語が入り混じったサイトだったので早々に脱落。そもそも周囲にFacebookアカウントを持っている人がいなかったので、当然のごとく放置していた(友人のいないSNSほど寂しいものはない)。
ちなみにその後2008年8月7日にtwitterアカウントを開設しているので(ここで調べられるよ)、いかにもミーハー感丸出しで食いついてみた、っていうのが如実に現れていてちょっぴり恥ずかしい。
というより、その後何年も放置していながら、最近の本格的なブームに乗ってようやく使い始めちゃってる所が、だいぶ恥ずかしい。

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