2007年12月17日月曜日

オープンソース周辺ビジネスに一つの答え?

このブログでも物議を醸した(ウケは良かったけど削除に追い込まれた)ワイズノット社が、民事再生手続を開始しました。

http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20071214/289568/

思ったよりは長持ちしましたが、とりあえず一区切り付きましたね。

さて、このニュースは世間にどう映るのでしょうか。
ちなみにここで言う「世間」とは、ワイズノットの他多くの企業が活動を行う企業社会とでも言いましょうか。大雑把に括ってIT業界、およびITを活用する企業の集合である産業界というのをイメージしています。

ワイズノットは、HPによると「オープンソースに専門特化し、先駆者となってきた」というのが売りだそうですが、IT業界には当然そう映っていないことは置いておいて、いわゆるITを活用しようとしているユーザ企業からすると、コストメリットが高く機能的にもビジネスに耐えうるようになってきた流行の「オープンソース企業」と映っているのではないかと思います。

そしてこのニュースを受け、その「オープンソース専門特化企業」が民事再生手続開始しちゃったんだから、見え方としては「オープンソースってビジネスとしてはダメじゃん、オープンソースはやっぱり安心できない」という判断を生んでしまうのではないかと思います。

上記のようなユーザ企業の方がいらっしゃったら、まずはここでその誤解を解かなければいけません。

まず、「オープンソース企業」と一口に言っても、開発している立場なのか、使っている立場なのかで大きく異なります。

ワイズノットは典型的な後者、つまり世にリリースされているOSSという英知を利用して、システム開発をする会社です。

前者の企業は、例えば先日このブログでも出しましたが「SugarCRM」をリリースしているケアブレインズ社。ここは、米国のOSS「SugarCRM」の日本のリセラーという立場ではありますが、社長がSugarCRMプロジェクトのボードメンバーとして参加しており中心にいること、さらにコミュニティを運営しつつ、開発も進めていることから、OSSを開発・リリースしている企業と言えます。

通常、オープンソース企業というと(ボクの感覚では)このケアブレイズ社のような前者を指しており、「あるOSSプロジェクトへのコミッタあるいはボードメンバーが中心にいて、そのOSSを中心にビジネスモデルを描いている企業」と言えます。(ここはボクの持論につき異論も出そうなので、是非コメントをお願いします)

この定義でいくとすると、ワイズノットさんはいわゆる普通の受託開発会社さんなんですが、商材としてオープンソースを使っていたので「オープンソース企業」と名乗ってる(た)んですね。(同社でOSSとして有名な人というと、masuidriveさんぐらいじゃないでしょうか。)

この両社にはビジネス面でも技術面でも大きな違いがあるんですが、それをごちゃ混ぜにして「オープンソースは不安だ」と一般企業の方々に勘違いされてしまうのではないかと、ボクは非常に危惧しているわけです。

特にビジネス面の違いを挙げるとすると、例として挙げているケアブレインズ社の場合は、元々コンサルティング会社なので「SugarCRMそのもの」をライセンシングして利益を出すというよりは、SugarCRMをベースに付加価値としてコンサルティングサービスを提供することをビジネスモデルとしています。

これに対してワイズノットは、(これ以降かなりの推論です)いろいろなOSSを担ぎ出してきてサービスメニュー化してはいますが、結局システム開発を受託してその内容に合うOSSを使って開発している形となるので、ビジネスモデルはあくまで「受託開発」。
そして、OSSオンリーの受託開発、特に技術力のない企業がやろうとするとサポートメニュー等をよほどしっかり立てない限りは利が出ない分野ですので、どちらかと言うと利益が手堅い派遣業にシフトしていき(ワイズノットの社長さんはもともとリクルートHRの方なんで、最初からそれを狙っていたのかもしれませんが)、とにかく大量に人を雇って派遣する、というスタイルになっていったわけです。で、大量に人を雇うのはいいけど、採用コストはそれだけかかるし、しかも専門職なので教育コストもかかります。そうこうしているうちに、今回の事態となってしまった。

つまり、今回のニュースの受け止め方としては「オープンソースビジネスで失敗した」のではなくて、「受託&人材派遣業で失敗した」と見るのが正しいわけです。


とりあえず、今回のニュースは業界全体にとっては(個人的に)とても良いことだと思います。

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