2011年1月23日日曜日

【読書】ロングエンゲージメント

ロングエンゲージメント なぜあの人は同じ会社のものばかり買い続けるのか最近どの書店に行っても見かけるので、気になって購入。

ざっと読みましたが、大当たりです。
後でもう1回、深く読みます。

最初にちょっとだけボクの話をします。
ボクは広報的なことは1年弱の間お世話になったマーケの師匠に教わったことをベースとしてるんだけど、それももう5年も前の話で、内容的には一世代前という感じ。それがわかっているんだけどなかなかどうして、染みついた「感覚」はどうしても抜けない。

具体的にボクの広報に関する感覚(手法)というと、半年間ぐらいの間にタイミングを合わせて一斉に花火を上げまくる、という方法。プレスリリース連発、WEB広告出向、コラム寄稿、イベント開催、セミナー講演・・・等によって一気に露出を高めて注目を引き寄せ、獲得したリードに対して営業をかける、というスタイル。
自社製品が提供するソリューションをアピールするため、その必要性を市場動向を背景に説明しながら啓蒙し、「皆に一斉に同じことを言わせる」というバズ的な手法なんだけど、この本を読み終わる頃には見事に「これからは、それじゃダメだな・・・」と痛感させられてしまう。


ボクがやっていたこの方法はモロに「アテンション獲得型」なんだけど、今は既に広告が見られない時代。いくらアテンションを獲得しようと趣向を凝らしても、情報インフレが起こりメディア自体にアテンションがない今、その広告は生活者には届かない、と本書では説かれる。
アテンションは、ご存じのとおり有名な「AIDMA」「AISAS」の最初の「A」。つまり、従来型では最初の一歩目でつまづいてしまう、ということ。

ちなみにこの本では「消費者」とは言わず「生活者」というような表現が使われていて、その辺りにも情報の捉え方、流れ方についての繊細さが感じられる。
さらに補足すると、企業で働く人は「従業員」ではなく「社員」と表記されているんだけど、それは、この本では自らのモチベーションで活動する人々を取り上げているため、会社に「従う」という意味合いにはそぐわないから、とのこと。言葉に拘りがある感じも、とても好き。


さて、ではこれからはアテンションではなく何が重要かと言うと。
ご存知の通り「共感」の獲得。
Facebookの「いいね!」や、TwitterのRT(ReTweet)等がわかりやすい例だけど、
情報の流れが一方通行から双方向へ激変し、ソーシャルメディアが浸透するにつれ、企業が介在しない生活者同士のつながりが生まれ、利害関係のない情報交換が行われるようになりました。

これ、実際に自分自身も生活者なので体感的に理解していることなんですが、PR戦略を考える時にはストンと抜けやすくて、まずはこの現状をしっかり頭に刷り込まないといけない。十分に成熟した市場において、人は必ずしも経済合理性に基づいた行動はしない、ということ。これ重要。

では共感を獲得するためには何が必要か?
本書では「コンセプト」「ストーリー」「デザイン」の3つが重要と説き、数多くのエピソード(有名なペプシやナイキのものから最新の事例まで)を引きながら、丁寧に解説されている。
3つのコンセプトに関しては、最近それぞれについて書籍が多く発刊されていますよね。

この本を読んでてふと思い出したのが、少し前に放送されていた日立のテレビCM。
研究職の社員の女性をフィーチャーして、その人がどんな仕事を、どんな思いでやっているか、どれだけ入れ込んでいるか、そしてその成果はどんな風に社会に貢献しているか、という内容。その他の企業CMでも同じような内容で放送されていたものがあったと思いますが、この手法はまさに共感を獲得するお手本のようなCMだな、と今さらながら感じました。


企業と生活者の間を繋ぐ広告という媒体について、「今」の現象を丁寧に解説し、今後どうしていくべきか、非常に真摯に、真正面から考察されている良書だと思います。おすすめ。

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